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「俺イギリスに行ってくらぁ。」
ようやく寒さも和らいだ春の日に,高杉は突拍子もなくそう言った。
イギリスには元から行く気は満々だったが邪魔が入り行けてなかった。
「長崎に出てそこから船に乗る。兵法指南に大村さんおるけぇ俺出ても大丈夫やろ。と言うかもう決めたけぇ行くからな。」
誰も止めてくれるなと高杉は言うが,何言っても聞かないのは分かってるからみんなの反応は“あ,はい”ぐらいなもんだった。
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「悩んどる時間は無駄や。」
縁側でごろりと転がり春の日差しに目を細める高杉の横で三津は繕い物をしていた。
「どれぐらいの期間行かはるの?」
「さぁなぁ。長期に渡るやろな。船は酔うけぇあんま好かんけど。」
大欠伸をしながら膝を貸してくれと言って,笑顔で針で刺されそうになった。
「三津さんも行くかー?」
「それならご自分の奥様誘ってください。それよりさっき話に出た大村さんってどなたですか?」
相変わらず俺には冷たいなと喉を鳴らして体を起こした。
それから高杉は大村益次郎と言う男について話し始めた。
「大村さんも萩の出身で医者や。兵学にも長けとるけぇ宇和島藩に専属医師として雇われとったんや。宇和島って分かるか?そこの海の向こう側にある島の地名や。」
高杉は三津に言っても地理など分からんだろうと適当な方向を指差して教えた。三津も縫い物をしてるからへぇ~ぐらいの反応しかしなかった。
「それからこっち戻って来てうちの軍の改制だの尽力してくれてる。あれや,俊輔がイギリスに密航する手助けもしてくれた人や。
俺よりも断然知識があるけぇ他のモンじゃ思いもよらん策を練りだす。あの人がおったら大丈夫やろ。」
「へぇ~。私会う機会ありますかね?」
「分からんけど歩く問題児やけぇ歩いとったら会えるかもな。散歩行くか?九一らおらんけぇつまらんやろ。」
そう言って高杉はまた欠伸をした。今日は高杉以外が軍事の会合に出ている。入江と共に山縣も呼ばれているから高杉が三津の世話役になった。
「散歩……じゃあお菓子買いに行きましょ!」
その提案に高杉は瞬時に嫌そうな顔をした。前回の女将との騒動以来,三津は宣言通り毎日お菓子を買いに行っていた。それに付き合わされる入江が可哀想だなと他人事みたいに思っていたが,とうとう今日は自分が行く羽目になるとは。
「気まずくないん?女将と。」
「最初はちょっとお互いに……。でも今は普通ですよ?九一さんは流石に外で待つようにしてはるけど。」
「やろうな。」高杉は俺も外におるのでいいならと和菓子屋行きを了承した。
三津は繕い物を一旦やめて高杉と出掛けることにした。
「前より伸びたな。」
高杉は並んで歩く三津の後頭部からちょんと伸びた髪を指で突いた。
結い上げるまでは出来ないが後ろで結紐で束ねる事は出来る。そこに入江から貰った髪飾りを挿していた。
「なぁあれから九一とは?やっとらんそ?」
「まぁたすぐ下の話する!してませんよ。九一さんは前より一歩身を引いてます。」
本当に我慢強く誠実な彼は以前より触れてくる回数も減った。初めは好きな気持ちが減ってしまったのかと少し寂しく思ったが,そうではなく単に叶わぬ恋に悶える自分を愉しんでいるとの事。
本人からそれを聞いた時,根っからの変態だなと改めて思った。
「相変わらず何考えてるか分からん奴やな……。そんで三津さんは?木戸さんとはどうなん?定期的にしちょるん?」
「やからそれ以外聞く事ないんですか?そりゃ求められたら応えますよ。これでも妻ですから。」
なんだかんだ三津も素直に答える。だから高杉が調子に乗るのだ。
「木戸さんはやっぱ激し目?」