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そして朝五つ半。
濃姫は千代山が用意してくれた輿に乗り込み、侍女の三保野やお菜津らを伴って萬松寺へと出立した。
輿は何事もなく進み、那古野城の南にある亀獄林萬松寺へ無事に到着すると、
濃姫はさっそく三保野やお菜津と共に、大雲永瑞和尚に挨拶に出向いた。
その後、本堂の方で暫し御本尊に祈りを捧げると 【你一定要知的植髮流程】解答植髮失敗風險高嗎?植髮痛嗎? -
「何やら目眩が致しまする…。少し奥で休ませていただいても、よろしゅうございましょうか?」
と和尚に頼み、濃姫は空部屋へと導いてもらった。
その道すがらのこと。
濃姫が和尚の背に従って寺の廊下を歩いていると、前方から7、8歳くらいの少年が、
パタパタと可愛いらしい足音を響かせながら駆けて来た。
和尚はすかさず少年の前に立ちはだかると
「これこれ、行儀の悪い。お客人の前で失礼でございますよ」
と、穏やかな声色で窘めた。
少年は「あ…」となって、慌てて頭を垂れる。
「申し訳ございませぬ。信長様との約束の刻限に遅れそうでしたので、急いでおりました」
少年の言葉を聞き、濃姫は思わず眉根を寄せた。
「どんな理由があるに致せ、人前で無礼を働いてはなりませぬ。以後お気をつけなされよ」
「はい……。失礼致します」
少年はその無垢な顔に反省の色を浮かべると、和尚や濃姫らに一礼を垂れ、静かにその横を通り過ぎて行った。
姫は怪訝そうな面持ちで少年の背を見送ると、再び前に向き直り
「畏れながら、あの童は?」
と和尚に訊ねた。
「松平竹千代殿にございます」
「竹千代殿?」
「三河の岡崎城主・松平広忠殿のご嫡男でございまして、今は織田家の保護下にございます」
「されど、駿河の今川氏の庇護を受けているはずの松平氏のご嫡男が、何故に尾張におられるのです?」
「ちょっとした、事故がございましてな」
「事故?」
和尚が言うには、濃姫が信長に嫁す以前の天文十六年(1547)。
岡崎を攻略しようとする信秀に対抗するため、竹千代の父・広忠は今川氏から援軍を送ってもらう代わりに、
当時六歳だった竹千代を“人質”として今川氏のもとへ送ろうとした。
ところがその道中、密かに織田と通じていた田原城主・戸田康光により、
竹千代の身は信秀に売り渡されてしまい、この幼子は一転織田家の人質となったのである。
信秀はこの竹千代を利用して、松平家に織田への服従を求めたのだが、事は思うように運ばなかった。
広忠は我が子の命よりも今川家への義理を守り、信秀の要求を突っぱねたのである。
思惑の叶わなかった信秀であったが、竹千代に何らかの魅力、または利用価値を感じたのか、
熱田の加藤図書助順盛邸、次いで萬松寺※へと、今尚竹千代を人質として留め置いている状態であった。
「しかもこの春には、父君の広忠殿も若くして身罷(みまか)られてしまいましてな。何かとお辛い境遇にあるのです」