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何が起こったのかわからなかった。

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何が起こったのかわからなかった。

何が起こったのかわからなかった。

 

これが――これが、怖ろしいということか。

 

死を覚悟したことは幾度もある。

冬山で雪に閉じ込められた時。

崖から落ちた時。

熊に襲われ、その爪にかかった時――食料を調達している自分が死ねば、おばばも生きては行けまい。

 

ゆえに、死ねない――とは思っていた。

だが、心の底では、どうだったろうか。

 

坊主どもの中には「死は救済」と口にする者がいる。

民百姓を煽り、おのれの領地や権益を守るための方便だ。

 

だが、人としてあつかわれず、いつ餓死するか、いつ悪党共に襲われるかと、日々、怯えて暮らしているおばばにとっては、救済かもしれない――いつしか、そう思うようになっていた。

だから、怖ろしくなかったのだ。

 

おばばは、よく泣いた。【你一定要知的植髮流程】解答植髮失敗風險高嗎?植髮痛嗎? -

笑ったところは見たことがない。

遠くから覗き見る人間達とは明らかに違っていた。

どこかが壊れていたのだろう。

 

イダテンも笑ったことがない。

物心ついてから泣いた覚えもない。

だが、これは鬼の子だからであろう。

    

おばばが死んだのちは、自分が生きている意味さえ見出せなくなった。

 

生きるため、食うために狩る。

血肉を食らい、ただ、ただ生きる。

獣たちとなにが変わろう。

 

いや、獣であれば仲間や家族もあろう。

自分には、それさえも与えられなかったのだ。

 

ゆえに、今日、生きる意味と目的を与えられたのだと思っていた――三郎の遺志を継ぐという。

 

自分の死は姫の死を意味する。

三郎やミコ、そしてヨシを失い。さらには三郎や義久が命を賭けてでも守りたかった、その姫をも、ここで失おうとしている。

 

ならば自分は一体何のために、この姿と、この力を持って生まれてきたのだ。

 

父と母を死に追いやり、人に蔑まれ、おばばを看取り、死んでいくためか。

この世でただ一人、おれのことを友と呼んでくれた三郎の願いひとつ叶えてやることも出来ず、ここで骸をさらすためか。

 

――怒りに震えた。

――これが、おれの天命だというのか。

これが、神の意志だというのか。

 

ぞわり、と、イダテンの中で何かが目を覚ました。

 

真紅の髪の毛が逆立った。

口端から犬歯が覗いた。

雄叫びをあげ、弓を手に藪から飛び出してきた黒い影に向けて手斧を飛ばした。

手斧は、その影の頭部を吹き飛ばし、中にあるものをぶちまけながらその先に落ちた。

 

道を駆け戻りながら、柄に結び付けている縄を手繰り寄せる。

藪に潜んでいた者たちが、弓を手に次々と姿を現した。

残り七人――いや、まだ出てきていない者もいるだろう。

 

怒りが体を突き動かした。

敵が矢をつがえるより早く間合いに入った。

 

低い姿勢から手斧を振り回し、足を吹き飛ばした。

二人目の腹を裂き、三人目の肩を砕いた。

血潮をぶちまけながら、先に進もうとして足を滑らせ、膝をついた。

 

左足の踏ん張りがきかない。

手斧に振り回され、力も息も続かない。

凍えた指にも力が入らない。

 

ここぞとばかりに太刀を振りかぶってきた男の胸に手斧を投げつけた。

ひしゃげた音と、こぽっという音がして男は口から血を吐きだした。

 

だが、明らかに力が落ちている。

加減したわけでもないのに突き抜けさえしない。

 

男が落とした太刀を掴む。

残り――あと三人。

 

一人はいかにもがっしりとした横幅のある男。

二人目は背の高い若い男。

もう一人は中肉中背。

三人は顔を見合わせ藪に消えた。体力を消耗する攻防を避け、先を急ぎたかった。

しかし、柵越えに手間取るだろう。

後方から矢を射かけられれば、すべてが終わる。

 

太刀と血まみれの手斧を手に、重い体に鞭打って藪に入る。

 

姫の苦しそうな声が耳に届いた。

怒りにまかせた動きで負担がかかったようだ。

かわいそうだが、しばらく辛抱してもらうほかはない。

 

通り抜けると、絶壁に囲まれた草地に出た。

押さえつけられ踏みつけられた枯草と洞窟近くの岩場を月の光が照らしだした。

 

三人は、左手奥の朽ちかけた祠の横で太刀を手にして待っていた。

月の光を背負い黒い影となっている。

光の差し込まない右手崖下の窪みに姫を乗せた背負子を下ろし、間合いを詰める。

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